引きこもり (2)

 普通に読んでいればなんてことないお話。だけどひとたび気づくと、違う光景が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。

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●独り暮らし

 仕事を早めに切り上げて帰ることにした。

 今朝、寝坊してしまって慌てて家を出る時に、どうにも玄関の鍵を締め忘れたように思うのだ。電車に飛び乗ってから、ふと不安が頭をもたげて、一日ずっと心配だった。

 独り暮らしはこういう時に困る。取られるような金目のものなどない貧乏住まいとはいえ。

 アパートに帰り、玄関のドアノブを回す。ガチャ。……鍵はちゃんとかかっていた。

 ま、そんなものだ。一安心して鍵を開け、部屋に入って灯りをつける。

 私はすぐ、「それ」に気づいた。座卓の上に、見覚えのない黒い紙袋が載っている。

 なんだこれ。私が買ったものじゃない。

 ぞわっ、とする。

 部屋の掃き出し窓に目をやる。窓にはちゃんと鍵がかかっている。

 え? え? と思っていると、ズボンのポケットの中でLINEの通知音がした。

 半ば無意識にスマホを手に取ると、友人からのメッセージだった。

 「今、借りてた漫画返しに来たんだけど、いなかったから置いてきたよ」「コンビニでも行ってるの?」「鍵は開いてるし電気はつけっぱなしだし、不用心だから気をつけなよ」

 紙袋の中を覗くと、確かにその子に貸していた漫画が入っていた。

 なーんだ、びっくりした。

●解説

 語り手は玄関の鍵を開け、部屋に入る時に灯りをつけています。

 しかし「友人」が言うには、つい今しがた語り手のアパートに行った時、「鍵は開いてるし電気はつけっぱなし」だったそうです。

 漫画の紙袋は部屋の中にあったのですから、「友人」が部屋を間違えたわけではないようです。

 つまり、鍵をかけ忘れた部屋に入り、灯りをつけて物色していた「誰か」がいたのです。幸運にも「友人」は、直接ソレに出くわさずに済んだようですが。

 そして、「友人」が帰った後に玄関には鍵がかけられ、窓にも鍵はかかっていたのですから、その「誰か」はおそらく今も……。

●安全圏が脅かされる恐怖

 「つけておいたはずの部屋の灯りがお風呂から戻ってきたら消えてる」「閉めたはずのカーテンが朝になったら開いてた」「顔を洗ってたら流しっぱなしにしてた蛇口が閉まってる」などなど……日常のちょっとした違和感から、「ナニカが自分のすぐそばにいた」ことを気付かせてゾッとさせるという仕掛けは、「意味が分かるとこわい話」の王道ですね。

 筆者は「恐怖」とは、「安全圏が脅かされることへの嫌悪」と言い換えられると思っています。「ここは安心」という主観的な線引きが踏み越えられる時に「恐怖」が生まれ、どうやって「踏み越えさせるか」に怪談を語る側のテクニックが問われるわけです。

 映画「リング」が公開された時、小説を読んでいた人の方が怖がっていた――という話を聞いたことがあります。原作にない、あの貞子がテレビから這い出す場面は、まさに観客の線引きを映像的に「踏み越えた」名シーンだと言えるでしょう。

 今回のような、「ナニカがそばにいたことに気づいていない」話型の怪談が「独り暮らしの自宅」を舞台に選ぶことが多いのは、「安全圏が脅かされる」恐怖を最も分かりやすく描けるからでしょう。「意味怖」ではありませんが、その意味で映画「呪怨」の「自分が寝ている掛布団の中からアイツが登場する」シーンは、「安全圏脅かし」史上最悪(最高)のアイディアだったと思います。お布団はいつだって私たちの味方のはずなのに……!

●白樺香澄

ライター編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリクラブ」に所属。クラブのことを恋人から「殺人集団」と呼ばれているが特に否定はしていない。怖がりだけど怖い話は好き。



(出典 news.nicovideo.jp)

映画、漫画、テレビゲーム化が行われた。このうち1998年の日本映画リング』およびそのリメイクである2002年のアメリカ映画『ザ・リング』はヒット作となり、ジャパニーズホラーブームの火付け役となった。 1998年公開の『リング』は配給収入10億円を記録した 。
68キロバイト (9,728 語) - 2020年5月26日 (火) 04:11


読んでいて怖くなった。

<このニュースへのネットの反応>

友人が合鍵を持ってた可能性が微レ存


最初のエピソードは「合鍵を持った誰か」の存在を示唆する現実的な恐怖の話だったのにどうして唐突に超自然的なホラーの話になるのか.


うちのキッチンなんか惑星ベジータ並みの重力(しかも落下方向がランダムに偏在)だぞ?なんでシンクに置いたグラスが横方向に落ちるんだよ!!


これからの季節、部屋に現れる虫が何よりの恐怖


俺の友達の「修羅場った上で別れた彼女が勝手に合鍵を作って上がり込み、晩飯を作って笑顔で帰宅を待っていた」話、聞く?


え?違和感無いわ俺。普通に友達が電気消してくれただけじゃない?朝から電気つける家って普通にあると思うけど?朝日が入る家と部屋なら違和感あるけども


何それ気になる


なぜ帰った瞬間に電話がかかってきたのか。


>000 「独り暮らし」の筆者がどういう意図で書いたか確信はないが、記事の筆者は後ろの考察を見る限り鍵は外側からでなく内側から閉めたと考えていると思うよ、つまり犯人はまだすぐそばにいる。で何をもって恐怖を感じるのかの観点で安全圏(家の中)が脅かされるを経由して安全圏が脅かされる超自然的ホラーの話になったのが書かれているように見えたけど。


友達とはいえ連絡もなしに訪れて、家主が居ない家に上がり込み、食卓の上に借りたものを置いて、家主が帰宅した途端タイミングよく連絡してくるという恐怖だろ。


ベッドの下に隠しておいたエロ本を、きっちりテーブルの上に並べて置いておかれた恐怖と同種の作り話ですね、分かります。


私はすぐ「それ」に気づいた。座卓の上に見覚えのない黒い昆虫が動いている。なんだこれ。私が飼っているものじゃない


「意味がわかると怖い話」と聞くと、どうしてもアレを思い浮かべずにはいられない。意味怖話の中でも最低レベルの駄作(個人的評価)である、「カレンダーの暗号」。本記事では取り上げられてなくて、安心したと同時にちょっと物足りなくもある。ところであれを考えた人って、どういう気持ちだったんだろうと気になって仕方ない


あーなるほどなー、黒い袋はミスリードで、ほっとさせておいてからアレ?ってくるパターンか。でもこれなら実話系の方が怖くない?「漫画返しにきたらお前のお兄さんが居て「入れ、入れ」としつこく言ってきたけど漫画だけ押し付けて帰ったんだよ」「兄いないんだけど…」みたいな。


ありきたりすぎてクソつまんねえ、なんで記事にしたん?


よくある怖い話のプロット部分だけ抜き出して「ほら怖いでしょう」と言われても…情景や心理の描写を無くしたらただのあらすじじゃん


意味怖も段々質が下がってきてるような気がすんだよなぁ。……まぁ、慣れきっちゃっただけかもしれんけど。上の奴なら、似た様なの3つは見た覚えがあるし。